20数年間在宅で実務翻訳にたずさわってきました。
もともと翻訳者を目ざしていたわけではなく、20代後半に翻訳のボランティアを始めたことがきっかけです。
専門の分野はありましたが、英語の能力に関して言えば、受験英語しか知らず、英会話もできませんでした。
それからおよそ十余年、40歳を過ぎてからやっとフリーランスの翻訳者としての一歩を踏み出すことができました。
翻訳者になれたのは、自分の力量だけではなく翻訳を通じて知り合った方々との交流によることの方が大きいでしょう。
多くの同業者を見てきた中で共通しているのは、勉強好き、本好き、強い探求心、好奇心旺盛、忍耐力もあり、といったところでしょうか。
自分に合ったワークスタイル
翻訳者は、いくつかの働き方、ワークスタイルが選べます。
まず「フリーランス」ですが、在宅で働く翻訳者が一番多いように思います。これは、翻訳の仕事がいつ発生するかわからないことで、翻訳会社はコスト削減のために登録制というシステムを採っているのだと思います。
次は翻訳会社で勤務する、これが一番かけだしの翻訳者にとっては勉強になるのですが、チャンスはそれほどないと言ってよいでしょう。
また、一般企業の社員、契約社員でも、翻訳(メール、その分野の文書、特許などが対象)にかかわることができれば、その経験が活かせて、独立して翻訳の起業ができるきっかけとなる可能性が高いです。
自分に合ったワークスタイルを見つけることが大切です。
どのような人が翻訳者に向いているのか
- 文章を読むことが好きである
- 文章を書くことが好きである
- 探求心が強い
- デスクワークが苦ではない
などいくつか挙げられます。
翻訳者志望の人は、たいていは英語力が高い人か、専門分野を持っていて翻訳に興味がある人です。
英語力の高い人は、専門分野を選択して勉強する必要があります。
一方専門分野を持っている人は、英語力のレベルアップが必要になります。
翻訳者になりたいと思っていても、なれる自信がなくて、自分がやっていけるのか不安に思っておられる方も多いと思います。
これらの課題を克服するために翻訳力、翻訳スキルを磨いて、いろいろ試行錯誤し、翻訳の学習を続けていれば、知識や経験が身についてきて、なにかの契機が訪れる可能性があると思われます。
また隠れた能力が発掘されることもあるでしょう。
自分に不足している、苦手なところを自覚して克服するように努力することが大切であるように思います。
フリーランスの翻訳者に求められる資質としては
- 自己管理能力が高い
- 一人でうまくストレスが発散できる
などが挙げられます。
さらに、ある程度は物事を楽観的に考えられる人の方が、フリーランスの仕事に合っているように思います。
1つの仕事が終わるとしばらくは解放感が勝っているのですが、数日たっても仕事が来ないときは、もう仕事は来ないのだろうかという不安感がだんだんと大きくなっていきます。
仕事が安定してきても、この不安感が軽減されることはあっても消え去ることはありませんでした。
そのため、できれば、仕事オンリーではなく、同業の人や同じ趣味の人と交流していこうと努力する人の方が、フリーランスという形態に合っていると思います。
一方、自己管理能力が高くない人は、フリーランサーよりも翻訳会社や一般企業に勤めることをお奨めします。
こういうことを踏まえて、自分が翻訳の仕事に向いているかどうかをもう一度考えてみる必要があるでしょう。
「語学で稼ぐ産業翻訳パーフェクトガイド(イカロス出版)」のコラム – フリーランスの産業翻訳者を目指す人へ 先輩からのアドバイス – から
* 自由な分、ある程度自分を律する自己管理能力が大切
* 固定給も仕事の保証もない、実力以前に自営業の精神で能動的にできるタイプかどうかの見極めが必要
* 組織から独立して継続的に受注するには、本業以外の能力も必要。自分の性格や得意・不得意を把握して検討したほうがいい
* 意外と体力を要するので、心身ともにアスリートの気分で自己管理。貯金と収入不安定の覚悟、その他の収入源の用意も必要
* 勉強は翻訳者になって終わりではなく、むしろ始まり。常に自己研鑽が必要
* クライアントや翻訳会社は単に仕事をくれる人ではなく、パートナーと考え、協力して取り組むべき

私に関して言えば、将来翻訳者になれるかどうか自信がなかったので、随分と回り道をしてしまいました。
費用が高い翻訳学校は避けて、科学翻訳の通信講座を受けたり、大学入試の模試の採点アルバイトをしたりして、英語力を高めようとしてはいたのですが、本格的に翻訳の勉強をすることに積極的に取り組んでいませんでした。
積極的になれたのは、偶然、翻訳を学べる仕事の案内がポストに入っていたことです。
内容は機械翻訳で、開発の一環として自宅でアルバイトができるので、費用がかからないことが魅力でした。
このアルバイトは、1年ぐらいしか続きませんでしたが、翻訳を目指そうという目的が明確になったように思います。
翻訳の仕事はいろいろな知識が必要です。
何事も無駄なことはないので、失敗を恐れずに、翻訳の学習に取り組んでください。
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