英文を書くにあたって基本的なルールを覚えておく必要がある
仕事を始めた頃ビジネスレターの英訳の依頼が来ました。
レターを英訳したことはなかったのですが、断ることもできず、仕事を引き受けました。
翻訳を始めて、すぐに目に飛び込んできたのが、「時下ますますご清栄のことと心よりお喜び申し上げます。また平素よりご贔屓を賜り厚くお礼申し上げます。・・・」といった文章でした。
これを直訳すれば、”We are pleased your company prospering more than ever. We would like to deeply thank you for your continuous support and cooperation.… ”というような英文になるのでしょうが、当時備えていたレターの英訳関連の本を見ても、ビジネスレターの例文に上記のような文章は書かれていませんでした。
英文メールの書き方のルール「英文のメールでは、要件から書き始める」を教わって(知って)いれば、参考本を調べることもなく、原文の「時下・・・」という日本語の手紙の決まり文句の部分をスルーしていたことでしょう。
しかし当時の私は英文のビジネスレターを書いたことがなく、原文を訳さないということにそれなりの裏付けが必要で、結局知人の翻訳者に電話して訳さない方が良いということを確認したのでした。
実務翻訳におけるさまざまな文書のstyle(文体)
英訳をするにあたって知っておかねばならないさまざまなルール(常識)があります。
実務翻訳では、カジュアルな英語表現は用いず、フォーマルな表現を使います。
多義語を使わない
また文章をより明確にするために、使う動詞にも気を付けましょう。
do、 have、take, make、get、giveなどは普段よく使う動詞ですが、多くの意味を持つので、曖昧な表現になってしまいます。
明確な文章を作るには、例えばget(得る)はreceive(受け取る)や obtain(獲得する)に、make(作る)はcreate(創り出す)やproduce(製造する)などに置き換えるなど明白に意味を伝えることができるような動詞を選ぶことが大切です。
またhave to (~しなければならない)は must に、had to は was/were required to などに言い換えます。
論文調、マニュアル調、契約書調、報告書調など英文のスタイルを学ぼう
実務翻訳でよく依頼が来るものに、マニュアル(取扱説明書・使用説明書)、報告書、論文、契約書などがあります。
これらの英訳文を書くためには、それぞれ決められたスタイル(文体)で表現することが重要です。
スタイルを無視すると、それがどのような文書なのかわかりずらくなり、読み手が混乱することになるからです。
マニュアル(manual)
商品の取扱い方法や操作手順などの記載している取扱説明書、使用説明書 (user’s manual, instruction manual)では、
動作の主体はユーザーなので主として命令文が用いられます。
厳守させる場合にはmustが用いられます。
対象となる製品はユーザーの所有物なので your (商品)という表現が用いられます。
仕様書(specification)
同じ製品を説明する場合でも、users’ manual(使用説明書)とspecification(仕様書)では異なったスタイルで英訳する必要があります。
マニュアルは、始めて使う人にもわかるように対象となる物の使い方を説明しています。
一方、仕様書はその対象となる物の機能や性能が説明されています。
したがって物(無生物)を主語とした文章が主に用いられます。
論文、報告書
行為の主体は著者ら(authors)なので、客観性を持たせるという目的のために、無生物を主語とする文章が望ましいですが、時には We(著者ら)を主語として用いることもあります。
論文の構成は、title(タイトル)、abstract(要旨)、introduction(序)、methods(方法)、results(結果)、
discussion(考察)、conclusions(結論)、reference(参考文献)からできています。
目的、比較、結果などの表現は、パターン化された文章を用いると読み手にとってわかりやすくなります。
目的を表す表現としては、
The purpose (objective) of this paper (study) is ~ この論文(研究)の目的は~である。
This paper examines ~ この論文は~を調査している。
要旨
This paper provides ~ この論文は~を提供する。
This paper concerns ~ この論文の主題は~である。
結果
This result suggests (indicates, reveals) that ~ この結果は~ということを示している。
As a result,~ 結果として ~である。
図表
Table 1 shows ~ 表1は~を表している。
The graph 2 indicate~ 図2は~を示している。
契約書
契約書の英訳では、独特の用語があります。
契約書では、義務を表す場合に、法的な拘束力をもつという点では、最も強い助動詞shall(~ものとする ~とする)を通常用います。
あるいはbe obliged to, have duty to, is required toという表現もできます。
参考
「英文書類や英語論文で必須の基本表現 – これだけは身に付けたい基礎ルール」 (Rules for editing effective documents and academic articles)
篠田義明著 東京電機大学客員教授 早稲田大学名誉教授
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